8年前の熊本地震で大きな被害を受けた町家が再建され、次々に国の登録有形文化財になっている。解体の危機を救ったのは、過去の大地震を機に生まれた仕組みだった。
熊本県宇城(うき)市の小川町商店街。国の有形文化財に登録された町家が4棟ある。うち3棟は熊本地震後の登録だ。さらに、今後2棟増える可能性がある。
2016年4月の熊本地震で宇城市は震度6強の揺れに2度見舞われた。商店街では、江戸時代末期のものとみられる建物で営業する若城(わかき)金物店の主屋が傾いた。店主の若城信一郎さん(79)は「役所からは『ほぼ全壊ですね』と言われ、解体するしかないと覚悟した」。大正時代から製糸業を営み、今は和服を販売する長谷川製糸も住居部分が大規模半壊の判定だった。1人で暮らす長谷川京子さん(90)は「もう壊すしかないとあきらめた」と話す。
しかし、専門家の目は違った。地震の翌月から、文化庁や熊本県、建築士会が次々に調査に入った。その一人、熊本高専の元教授で1級建築士の磯田節子さん(74)は「確かに瓦は落ち、しっくい壁は崩れたが、構造的には問題なかった。木造は意外に地震に強かった」とふり返る。
商店街は合併前の小川町の中…